赤坂猛「野生動物問題よもやまばなし」
  • あかさか・たけし
  • 一般社団法人エゾシカ協会代表理事。2008年度より石狩圏に生息するエゾシカの生息実態調査等に着手。一方、地域に埋もれ行くタンチョウなど「野生動物と人との関係史」の発掘調査にも取り組んでいる。調査手法はひたすら「歩く・観る・聴く」そして「編む」、とシンプル。

第1回 はじめに──野生動物と自身──

連載コラム「野生動物問題よもやまばなし」では、この半世紀の間に私自身が歩んできた・観てきた・聴いてきた様々な野生動物との「事案など」を記してゆきたいと思います。そこで今回は、私事で恐縮ではありますが、自身の半世紀から始めることといたします。

今から55年前、高校生の私は、週刊少年マガジンの連載作品「牙王」(石川球太、原作・戸川幸夫)の虜になっていました。「牙王」は、北海道大雪山を舞台にオオカミの血を引く野犬・キバとその飼い主との出会いと交流、そして人食い羆の片目のゴンに対峙するアイヌの猟師とキバ等の野犬の群れによる壮絶な戦い……が繰り広げられた作品でした。私は漫画の「牙王」から、やがて戸川幸夫さんの「牙王物語」など動物文学の世界へと入ってゆきました。

赤坂猛「野生動物問題よもやまばなし」

私のお宝。『戸川幸夫動物文学全集 全15巻』(講談社 1976~1977)

「牙王」との出会いから3年後の1968年、私は東京農工大学農学部林学科に進学しました。3年生となった1970年、カモシカをはじめシカ、サル、ツキノワグマの生態及び被害問題等を研究テーマとする自然保護学講座(指導教官・丸山直樹先生)の一員となりました。私は、当時「幻の動物」とも呼ばれていたカモシカの生態研究を卒論テーマとする一方、シカ等のフィールド調査にも参加するなどして広く野生動物とその社会問題等を学ぶことができました。結局、大学には修士に進むなどして9年間在籍しました。

在学中にカモシカをはじめ多くの野生動物問題に向き合う中で、職業は「野生動物の行政官」と決め、1977年北海道庁に入りました。道庁には30年間勤務し、野生動物行政や自然・環境行政、さらには森林行政にも関わることができました。野生動物行政では、ヒグマやエゾシカ等の狩猟獣問題、タンチョウやシマフクロウ、オオワシなどの希少鳥類問題、そしてアライグマやミンク等の外来動物問題等に広く深く携わってきました。

道庁を2007年度に退職し、江別市にある酪農学園大学・生命環境学科の教員となり、札幌市近郊等のエゾシカの生息実態調査等に取り組む一方、講義では野生動物保全行政論などを担当してきました。大学には10年間勤務し2017年度に退官しました。

自身の野生動物との半世紀は、概ね「行政」での30年及び「大学」での20年、となります。この半世紀は、「…野生動物と私たち人間とのあいだに、多様で新たな関係が急速に生まれ、しかも、その関係の多くは問題をはらんでいる」(羽山2001)ものでした。

このコラムでは、野生動物と社会(人間)との関りの中から生じる様々な問題等について記してゆきたいと思います。その際、野生動物問題には歴史的な視点も重要と考えていることから、そのような観点からも「点描」してゆきたいと思います。お付き合いいただければ幸甚です。

次は、昭和初期から平成に至る狩猟鳥獣の捕獲数の推移について取り上げます。


引用文献 羽山伸一. 2001.野生動物問題.地人書館.250pp.


2020年6月29日公開