赤坂猛「野生動物問題よもやまばなし」
  • あかさか・たけし
  • 一般社団法人エゾシカ協会代表理事。2008年度より石狩圏に生息するエゾシカの生息実態調査等に着手。一方、地域に埋もれ行くタンチョウなど「野生動物と人との関係史」の発掘調査にも取り組んでいる。調査手法はひたすら「歩く・観る・聴く」そして「編む」、とシンプル。

第2回 昭和初期から平成に至る狩猟鳥獣の捕獲数の推移について(その1)

前回、「野生動物問題には歴史的な視点も重要と考えている」と記しました。そこで今回は、過去90年にわたる「狩猟鳥獣」の捕獲数の推移を通して、歴史の一端を視ていきたいと思います。

ここでいう「狩猟鳥獣」は、法律用語です。「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」が、その肉又は毛皮を利用する目的、管理をする目的等で捕獲等の対象となる鳥獣(第2条の7)と定めています。この「狩猟してよい鳥獣」を並べたホワイトリスト式の狩猟鳥獣制度が創設されたのは1918(大正7)年で、それまでは禁猟鳥獣の種名を並べたブラックリスト式でした。創設時の「狩猟鳥獣」は、「鳥類47種、獣類(アマミノクロウサギを除く)」というものでした。以来これまでに10回以上の改正・変更などを経て、現在の狩猟鳥獣(鳥類28種と獣類20種の計48種)(表参照)に至っています。

表 狩猟鳥獣

鳥類(28種) エゾライチョウ、ヤマドリ、キジ、コジュケイ、ヨシガモ、ヒドリガモ、マガモ、カルガモ、ハシビロガモ、オナガガモ、コガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、キジバト、カワウ、ゴイサギ、バン、ヤマシギ、タシギ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ヒヨドリ、ムクドリ、ニュウナイスズメ、スズメ
獣類(20種) タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン、イタチ(オス)、チョウセンイタチ(オス)、ミンク、アナグマ、アライグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、ハクビシン、イノシシ、ニホンジカ、タイワンリス、シマリス、ヌートリア、ユキウサギ、ノウサギ

前置きはこのくらいにしておきましょう。

図-1をご覧ください。1928(昭和3)年から2016(平成28)までの約90年間に及ぶ狩猟鳥獣の捕獲数の推移を示したものです。本図は、環境省・野生生物課が主催した「野生鳥獣保護管理検討会」(2000年5月開催)の会議資料に掲載されたグラフ(1938年~1998年)(注1)及び環境省の鳥獣関係統計(1999年~2016年)を元に作図したものです。

図1

図―1 狩猟鳥獣の捕獲数の推移(1928年~2016年)

まず、狩猟鳥の捕獲数の推移をみますと、1928年から1940年代半ばまでは1500万羽から1900万羽で推移し、その後10年ほどは大きく減少し500万羽から900万羽、そして1960年から1970年代半ばまでは1000万羽から1300万羽で推移していることが読み取れます。そして、1970年代後半より一気に減少し2016年へと至っています。ちなみに、1975年の捕獲数は約963万羽(注2)、2016年は約40万羽となり、捕獲数はこの40年余で約50分の2へと急減しています。

次に、狩猟獣の捕獲数の推移をみますと、1928年から1970年代半ばまでの約40年間は、80万頭から140万頭のなかで増減を繰り返し推移してきています。しかし、1970年後半から1990年代後半までの約20年間は、狩猟鳥と同様に一気に減少してゆきます。しかし、その後は一転して増加へと転じてゆきます。これは、狩猟獣20種のうち「シカとイノシシ」の突出した捕獲数の増加によるものです。

図2

図―2 狩猟獣、「シカ・イノシシの2種」及び「シカ・イノシシを除く狩猟獣の18種」の捕獲数の推移(1998年~2016年)。環境省・鳥獣関係統計を元に作図。

図―2は、1998年から2016年の間の狩猟獣の捕獲数の推移を、「シカ・イノシシの2種」、及び「シカ・イノシシを除く狩猟獣の18種」についてそれぞれ示したものです。狩猟獣は1998年以降、約30~40万頭のなかで緩やかな増加傾向をみせていますが、その増減は「シカ・イノシシ」の捕獲数の影響を受けていることがみて取れます。一方、「シカ・イノシシを除く狩猟獣18種」の捕獲数は狩猟鳥のように減少し続けています。1998年の捕獲数307,752頭の内訳は「イノシシ・シカ」が191,515頭(62%)、「その他の狩猟獣」が116,237頭(38%)でした。2016年の捕獲数344,110頭の内訳は「イノシシ・シカ」が323,865頭と94%をしめ、「その他の狩猟獣18種」は20,245頭と僅か6%にすぎませんでした。

1998年から2016年の20年ほどで、キツネやタヌキ、ウサギなど18種からなる「その他の狩猟獣」の捕獲数は、約12万頭から2万頭へと減少(1/6)してきています。一方、「シカ・イノシシ」の捕獲数は、約20万頭から32万頭へと増加(1.6倍)しています。この四半世紀、シカやイノシシによる激甚な農林業等被害問題に対して官民挙げて取り組みつつある種々の事業の「結果」の一つであると考えられます。

1928年から2016年までの約90年間の狩猟鳥獣の捕獲数の推移を視てきました。狩猟鳥獣の捕獲数は、1975年頃を境にして減少してゆきました。ちなみに、この間の捕獲数について主な狩猟獣で視ますと、シカの捕獲数は、1933(昭和8)年は3,123頭(注3)、2016年は161,134頭へと52倍へと激増しています。一方、ウサギの捕獲数は、1933年は739,340頭(注3)、2016年は5,677頭と、8/1000に激減しています。約90年間という経年の推移を省いての比較(物言い)ではありますが、狩猟獣のシカとウサギへの「捕獲数」の変貌に驚かされます。(図ー3)

図3

図−3 1933(昭和8)年と、2016(平成28)年の狩猟獣捕獲数のうちわけ。注3の資料および環境省・鳥獣関係統計を元に作図。

この約90年の間、狩猟鳥獣に対する人々(社会)の関りには、種々の出来事そして大きな変遷などがありました。そして、それらに伴い野生鳥獣の生息実態にも多大な影響を与えていたようです。

次回は、それらの出来事や変遷(史)などを視ていきたいと思います。


注1 「環境省自然環境局野生生物課.2001. 野生鳥獣保護管理検討会資料集.p.266.」を参照。

注2 環境省自然環境局野生生物課鳥獣管理業務室(担当者様)より聴取(2020年7月13日)。

注3 「近代日本狩猟図書館・第十巻」(社団法人 大日本猟友会 1981)に復刻された『連合猟友・第2号』(大日本連合猟友会発行 1934)に掲載された表「昭和八年度狩猟免許者ニ依ル種類別鳥類(獣類)捕獲員数」を参照。


2020年7月24日公開。イラスト作成協力/平田剛士