赤坂猛「野生動物問題よもやまばなし」
  • あかさか・たけし
  • 一般社団法人エゾシカ協会代表理事。2008年度より石狩圏に生息するエゾシカの生息実態調査等に着手。一方、地域に埋もれ行くタンチョウなど「野生動物と人との関係史」の発掘調査にも取り組んでいる。調査手法はひたすら「歩く・観る・聴く」そして「編む」、とシンプル。

第11回 昭和50年代以降の狩猟鳥獣と社会(その2)

本コラムでは、これまで1928年から近年までの約1世紀の狩猟鳥獣と社会の関り(の一端)を視てきました。今回は、直近の20年余の狩猟獣の捕獲数の推移等から「狩猟獣」の抱える問題等を考えてみたいと思います。

狩猟獣の捕獲数の推移(1996年から2016年)

・捕獲数が増加してゆく獣

狩猟獣の捕獲数の推移は、1970年後半から1990年代後半までの約20年間は、狩猟鳥と同様に一気に減少してゆきますが、その後は一転して増加へと転じてゆきます。これは、「シカとイノシシ」の捕獲数の増加によるものです(よもやまばなし 第2回)。

図-1は、1996年から2016年の21年間のシカとイノシシの捕獲数の推移です(環境省HPの鳥獣関係統計より作成、以下同様)。シカの捕獲数は1996年の5万4969頭から、10年後の2005年は12万542頭、そして2016年は16万1134頭へと増えてゆきました。この間のシカの最多捕獲数は2014年の18万9933頭でした。

図1

図-1 シカ・イノシシの狩猟による捕獲数の推移(1996~2016年).

また、イノシシの捕獲数は1996年の8万1946頭から、2005年の13万9455頭、そして2016年は16万2741頭へと増えてゆきました。この間のイノシシの最多捕獲数は2010年の22万8342頭でした。

直近の20年余で、捕獲数はシカが約3倍へ、イノシシが約2倍へと増加してきています。

・捕獲数が減少してゆく獣

一方、ノウサギやイタチ、リス類等の「毛皮獣」の捕獲数は一貫して減少し続けていくことは前回のコラムで触れました。図-2は、ノウサギ等6種・類の捕獲数の推移です。

図2

図-2 毛皮獣の狩猟による捕獲数の推移(1996~2016年).

ノウサギの捕獲数は、1996年は10万1016頭、10年後の2005年は3万4519頭、そして2016年は5677頭へと大きく減少していきました。ノウサギの捕獲数は20年余で20分の1へと減じています。

タヌキの捕獲数は、1996年は2万3163頭、2005年は1万2765頭、そして2016年は6579頭へと減少しています。キツネやテン、そしてオスイタチやリス類も緩やかに一貫して減じていきます。ちなみに、キツネの捕獲数をみますと1996年は7102頭、2005年は2728頭、そして2016年は1779頭へと減じています。テンは、1996年は3152頭、2016年は504頭でした。

直近20年余の捕獲数の推移をみてきますと、ノウサギやリス類、イタチなどへの「毛皮獣」というかつての括りは、最早、消え失せてしまったように思われます。

・捕獲数が一貫して少ない獣

狩猟獣のリスト(下)をご覧ください。狩猟獣20種のなかには、ミンクやアライグマ、ハクビシン、タイワンリス、ヌートリアなどの外来種6種が含まれています。外来種6種の内、ミンク、アライグマ、ハクビシンの3種は1994年に狩猟獣へと追加されました。

表 狩猟獣(20種) タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン、イタチ(オス)、チョウセンイタチ(オス)、ミンク、アナグマ、アライグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、ハクビシン、イノシシ、ニホンジカ、タイワンリス、シマリス、ヌートリア、ユキウサギ、ノウサギ

実は、私はミンク等3種の狩猟獣への追加に関して、環境省より意見を聴かれたことがあります。当時、私は北海道庁職員として「野生化ミンク」の被害問題等を抱えていたこともあり、「外来種でもあり狩猟により生息数の減少が期待される」旨の話をしました。環境省からも、狩猟獣にすることでこれら外来種の個体数を減少へと導ける旨の話がありました。

アライグマやハクビシンなど5種の捕獲数の推移をご覧ください(図-3)。狩猟による捕獲圧の期待は、見事に外れてしまいました。ミンク、アライグマ及びハクビシンの捕獲数は、この20年余、1000頭以下で推移しています。ミンクの捕獲数は、2008年の8頭から1997年の48頭と2桁で推移してきています。アライグマは、1996年は123頭、10年後の2005年は254頭、そして2016年には910頭へと増えてきています。1963年に狩猟獣となったヌートリアの捕獲数は、この20年余を1000頭前後で推移してきています。

図3

図-3 タイワンリス等外来種の狩猟による捕獲数の推移(1996~2016年).

外来種の狩猟獣は、捕獲数の推移から視ますと「狩猟対象とされていない」かのように思われてきます。

主な狩猟獣の捕獲数の推移(1923年から1991年)

図-4(間野 1998)は、1923(大正12)年から1991(平成3)年までの約70年間と長期間におよぶ、クマ類やイノシシ、シカ、ノウサギなど狩猟獣12種の捕獲数の推移を示したものです。北海道環境科学研究センターのヒグマ研究者・間野勉さんの論文「狩猟獣の乱獲、絶滅、防除、管理、保護の検証―鳥獣統計の分析―」(1998)より引用しました。

図4

図-4 1923(大正12)~1991(平成3)年度における主要な狩猟獣の捕獲数の推移。細い実線は狩猟による捕獲数、破線は駆除による捕獲数、太い実線は総捕獲数をあらわす(間野 1998)

間野さんは、「捕獲数の変動は種により様々である。変動の増加傾向や安定傾向、あるいは周期性などのパターンは、取り上げる時間の長さによって異なるが、…」と記されています。先にご覧いただいた図-1(シカやイノシシ)及び図-2(ノウサギ等毛皮獣)の捕獲数の推移図は1996年から2016年ですので、種ごとに図-4(1923年~1991年)のその後を追跡してみてください。なお、図-4にはリス類のように総捕獲数のみの推移図もありますが、「狩猟獣の多くは捕獲のうち狩猟が大多数を占める」(間野 1988)とあります。

イノシシやシカの捕獲数は、この期間中、一貫して増加してきていることが分かります。

イタチやリス類等は、1960年代前半頃より減少しはじめ、そのまま近年に至っていることがわかります。一方、キツネやタヌキ、テンは直近の20年余で一気に減少してきていることが読み取れます。また、これら毛皮獣のかつて(1923年から1991年)の「捕獲数」を視ますと、リス類の総捕獲数は1923年から1970年頃までは6万頭から30万頭の間で、イタチは1923年から1960年代前半くらいまでは10万頭から15万頭前後でそれぞれ推移していることが読み取れます。これら2種の2016年の捕獲数は、リス類が446頭、イタチが315頭でした。

近年の狩猟獣の抱える社会問題

これまで、狩猟獣の捕獲数の推移を視てきました。毛皮獣の捕獲数は一貫して減少し続けてきています。また、外来種の捕獲数は、総じて1000頭前後で推移し続けています。

そこで、次に、上記の毛皮獣や外来種の「有害獣駆除数」(注)をみてみましょう。

図5

図-5 ノウサギ等毛皮獣の有害駆除数の推移(1996~2016年)

図-5は、毛皮獣の有害獣駆除数の推移です(環境省HPの鳥獣関係統計より作成、以下同様)。ノウサギの駆除数は減少していきますが、タヌキやリス類、キツネ等の駆除数は増加しています。タヌキは、1996年は5741頭、2016年には2万5047頭へと、約5倍に増えてきています。キツネは、1996年は6972頭、2016年には8334頭へと増えてゆきます。

有害獣駆除数が年々増えてゆくことは、毛皮獣による農林業等の被害が増えてきている(広がってきている)ことが示唆されます。毛皮獣は狩猟による永年の捕獲から「解放」されてきており、生息数の増加や分布域の広がり等も推測されます。図-6は、毛皮獣の狩猟及び有害獣駆除の捕獲数の推移です。

図6

図-6 毛皮獣の狩猟及び有害駆除による捕獲数の推移(1996~2016年)

図-7は、外来種の狩猟及び有害獣駆除数の推移です。外来種の駆除数は一様に増え続けてきています。アライグマの駆除数は、1996年の17頭が、10年後の2005年には6233頭、そして2016年には1万5097頭(1996年の約900倍)へと激増しています。同様にハクビシンは、1996年の301頭が、2005年には1819頭、そして2016年には1万8111頭(1996年の60倍)へと増えてきています。

図7

図-7 外来種の狩猟及び有害駆除による捕獲数の推移(1996~2016年)

今後、毛皮獣の狩猟による捕獲は(更に)減少し続けてゆくことが推測されます。また、アライグマを除く外来種については、その捕獲数は引き続き1000頭前後で推移してゆくことが推測されます。この20年余の有害獣駆除数はノウサギを除く毛皮獣や外来種は一様に増えてきており、先行きの農林業等被害の広がりや甚大化が懸念されます。

近年、全国レベルで大きな社会問題とされている狩猟獣はシカ、イノシシそしてクマ類ではないでしょうか。シカやイノシシの個体数を半減させることは環境省や地方自治体の喫緊の行政課題とされています。また、各地でクマ類が市街地等へ頻繁に現れ深刻な問題を引き起こしていることもしばしば報道されています。

これらの「シカやイノシシ、クマ類問題」に加えて、「毛皮獣や外来種」の問題へも注視していく必要があると思料します。次回も引き続き「狩猟鳥獣」の問題を考えます。


(注)有害獣駆除数…鳥獣保護管理法では、鳥獣又は鳥類の卵については、原則としてその捕獲や採取は禁止されています。しかし、鳥獣による農林水産業被害等が生じている場合などには、都道府県知事などの許可を得て鳥獣の捕獲等をすることが認められます。知事の許可を得て捕獲した個体数が「有害獣駆除数」です。


引用文献


2020年11月10日公開。イラスト作成協力/平田剛士