赤坂猛「シカ捕獲認証制度(DCC)への歩み」
  • あかさか・たけし
  • 一般社団法人エゾシカ協会代表理事。

第1回 シカ捕獲認証制度(DCC)への歩み

ここ十数年、北海道ではエゾシカも含めた野生動物問題を担える専門家のありようについて、官民を挙げて種々議論や検討、試行が繰り返されてきた。何はともあれ、それらの議論等々を経て提起されたものが、このたびの民間発の「シカ捕獲認証制度」である。本制度に至る主要な歩みをみてみたい。

2003年、野生鳥獣保護管理制度検討会の設置

北海道庁は、2003年10月、「現在、野生鳥獣の保護管理における制度については、狩猟及び有害鳥獣捕獲があるが、これらを実施する本道の狩猟者は減少・高齢化が進んでおり、地域における保護管理の体制維持が懸念されている」とし、今後の適正な野生鳥獣の保護管理の在り方を検討するため「野生鳥獣保護管理制度検討会」を設置した。

検討会は、研究者・市町村職員・狩猟者団体など11名の委員で構成され、2005年3月までの間、延べ8回開催され、同年4月に『本道における野生鳥獣保護管理の在り方検討報告書』(以下、報告書)を公表した。

この報告書では、「地域における保護管理を担う人材」として、(1)捕獲者は、地域のハンター及び新たに「専門捕獲者及びガバメントハンター」とし、(2)上記捕獲者は、新たな「専門的な人材」との連携が、とれるような地域の体制整備が必須とした(図)。

『本道における野生鳥獣保護管理の在り方検討報告書』

図 地域における保護管理システムのイメージ。
北海道「本道における野生鳥獣保護管理のあり方検討報告書」(2005年4月)掲載の原図を改変。

我々は、この報告書を踏まえた「担い手育成への動き」を期待したが、特段の動きもなく時間が流れた。

2010年、エゾシカネットワーク協議会の設置

「担い手育成」が動き出した。2010年4月、北海道庁は、本道の生物多様性に深刻な攪乱をもたらしてきているエゾシカ問題に対処するため、民(大学、研究機関など)と官(北海道など)、合わせて13の機関・団体などからなる「エゾシカネットワーク協議会」(以下、シカネット)を立ち上げた。このシカ・ネットが取り組む事業は、保護管理を担う人材育成や効率的な捕獲技術の検討など計4事業であった。

この「保護管理を担う人材育成事業」は、捕獲専門家養成・野生鳥獣保護管理者養成・地域リーダー育成など多岐に及んでいた。なかでも、捕獲専門家養成では、人材育成と制度設計をも検討するという踏み込んだものであり、これは上述した「報告書」の提言を踏まえたものともとれるものであった。

地域リーダー育成等研修会は、西興部村や札幌市等で計8回開催し、鳥獣問題を担う市町村や農協・森林管理局の職員等152名の参加を得て実施した。また、新人(狩猟者)研修には65名が、捕獲の新たな担い手研修には445名が参加した。

これらの研修会より、我々は、継続した取り組みの必要性を痛感した。しかし、シカ・ネットが解散した2013年度以降、研修の場は閉ざされたままであり、加えて、捕獲専門家養成で掲げた「人材育成と制度設計の検討」については、成果を見ることなく閉じられてしまった。

シカ・ネットの解散後、我々有志は「担い手育成に向けた準備会」を立ち上げた。それに支援の手を差し伸べてくれたのは「オホーツク山の幸活用推進協議会」(西興部村、滝上町、下川町)であった。シカ人材育成の本場英国での数度の研修等も経て、2年後に冒頭の制度化に至ったのである。(つづく)


初出 エゾシカ協会ニューズレター第39号(2015年10月)