一般社団法人エゾシカ協会

えぞしかのたび


手島圭三郎・著

リブリオ出版

1785円


この絵本は版画絵本である。巷に豊富にある、にぎやかで派手な色彩の絵本とは違って、線の力強さ、粋で渋い配色、巧みな画面構成で、大胆かつ迫力のある作品だ。エゾシカの生態に基づいているストーリーもそうだが、森や雪などの自然の表現や動物たちの姿が生き生きとしているのは、やはり作家が北海道在住であるからだろう。

特に、札幌など人間の住む街のように除雪されない山奥で暮らすシカの親子が、首まで埋まるやわらかい雪の中を、仲間の足跡を追って旅を続けていくシーンは、全身全霊で生きる姿を目の前で見ているようで胸に迫った。エゾシカの他にも「北に生きるかしこい動物たち」を扱った絵本のシリーズが出ていて、国際的にも評価の高いこの人の作品は、エゾシカ同様、北海道の財産でありましょう。(評者・大泰司裕代)