一般社団法人エゾシカ協会

鹿よ おれの兄弟よ


神沢利子・作、G.D.パヴリーシン・絵
福音館書店、1700円+税

狩猟採集民の男の舟が大河を流れる。彼の家族の生活はシベリアの川と森に全く依存している。伝統的な服や靴は鹿の皮でできていて、食べた鹿肉は彼の血肉になるため、彼は自分を鹿であるという。

物語はいたってシンプルであり、人間が自然の一部であることを、緻密に美しく描かれた鹿や人や森や川が静かに語っている。

「くまの子ウーフ」などで有名な児童文学者とハバロフスク在住の画家の筆による、人と鹿の関わりの原点についての物語である。(評者・伊吾田宏正)