伊藤英人の狩猟本の世界

136.『獣医倫理入門』バーナード・ローリン著、白揚社、2010年


136.『獣医倫理入門』バーナード・ローリン著、白揚社、2010年


前半は総論で、後半は事例集。獣医師が判断を迫られるさまざまなケースにおける、手塚治虫『ブラックジャック』に通じる難問を投げかけつつ、模範的立場を明示する。難手術か、安楽死か? 劣悪な飼育環境や虐待に気づいた時、通報するか、守秘義務を守るか? 教科書的な一般論を並べるよりも、本書のように現実的な状況における判断を追っていくほうが役に立つだろうし、おもしろい。狩猟と関係する事例もある。

飼い主の身勝手な都合によって健康なペットを安楽死させる話がたびたび出てくる。本来の仕事とは言えない依頼に、獣医師は胸を痛めているようだ。