伊藤英人の狩猟本の世界

166.『暇と退屈の倫理学』國分功一郎著、朝日出版社、2011年

 

166.『暇と退屈の倫理学』國分功一郎著、朝日出版社、2011年

平均寿命が延びている。この長すぎる人生を「退屈」「暇つぶし」と考える人がいる。しかし、もし退屈を制することができたなら、豊かな人生となる。行列も渋滞も怖くない。

不当に閑職に追いやられても、充実感とともに給料が得られる。

人間としての生を謳歌するには、退屈を何とか克服すべきである。本書では退屈とは何かを考えていくにあたり、「狩猟」や「動物」が(結論を含む)重要箇所で登場する。

野生動物の行動を観察すると、退屈しているようにはみえない(動物園では感じることがある)。ヒトももともと野生下では退屈を感じなかったのであろう。では、退屈はいつ「発生」したのか。著者は、狩猟採集の遊動生活を変え、定住を始めた時点が退屈のルーツであるという。定住生活の歴史は浅い。発生した退屈に未だに悩まされているということは、人間はまだ定住生活に適応しきれていないのである。

「なぜ現代人は狩猟をするのか」を考える事例が序盤にある。ウサギ狩りに出かけようとするハンターにウサギの肉や毛皮をプレゼントしても、ハンターはちっともおもしろくない、というイジワルな問いかけである。ハンターがほしいのはウサギ本体ではない。では何が目的なのか。

本書はビジネス書によくある「効率的な時間の使い方」の類ではない。時間の概念そのものの変革を迫る。本書は要約しても意味がなく、通読しないと理解が難しいが、誰にとっても有益な本である。