伊藤英人の狩猟本の世界

213.『分解の哲学』藤原辰史著、青土社、2019年

213.『分解の哲学』藤原辰史著、青土社、2019年

文系からみた「分解」論。ゴミ拾い、葬儀などは社会のサイクルの一端を担う重要な仕事でありながら、不当な差別の対象となり、社会的評価が低い。

生態系内においても、死や分解は不可欠なイベントである。「生」は死の対極にあるのではなく、「緩やかな分解」と言い換えることさえ可能だ。社会でも生態系でも生産ばかりが注目されるが、生産は分解されたものからしかなしえない。サケの回帰(遡上と死)は流域に恵みをもたらし、次代の糧となっている。

「残酷である、と目を覆ったその手をもう一度振り払い、装置のもたらす残虐さと分解のもたらす徹底さの違いを見極めることが、分解の世界の担い手となる第一歩になるだろう。」

狩猟も分解行為そのものであり、分解に付随するマイナスイメージを抱えている。しかし、過度に虚飾して「命をいただく」という次元でとらえなくていい。分解者で充分である。自信をもって分解を担おうではないか。