伊藤英人の狩猟本の世界

236.『人間と動物の病気を一緒にみる』B.N.ホロウィッツ・K.バウアーズ著、土屋晶子訳、インターシフト、2014年

236.『人間と動物の病気を一緒にみる』B.N.ホロウィッツ・K.バウアーズ著、土屋晶子訳、インターシフト、2014年

医学と獣医学の境界をなくす「汎動物学(zoobiquity)」。ヒトの病状の把握と治療に、獣の病気や行動が参考になる。医学と獣医学では呼び名が異なるものの、同一の症状を示す病気がある。医学と獣医学の間に横たわる、歴史ある強固な境界を取り去ることで、互いにメリットがあるはずだ、という画期的な主張。なお、人畜共通感染症の話ではない。

余計な擬人化は一切ないのだが、人間と同じように薬物依存、過食による肥満、自傷行為をやってしまう動物の姿には「人間味」があり、どこかほほえましい。

拒食症の章で、捕食者の存在によって草食動物の行動が変化する、という例が示された。捕食者がいなければ見張りに割く時間が減り、採食時間が増える。すると、栄養状態が向上するので、子育ての成功率も上がると思われる。良いか悪いかは別として、狩猟者の有無、オオカミの不在がシカの行動に影響を与えている。

子育てや思春期の行動の理解は、親として学ぶところがあった。動物にも思春期があり、若者が危険な行動に出る。それも当然重要な時期である。