伊藤英人の狩猟本の世界

256.『動物と子どもの関係学』G. F. メルスン著、横山章光・加藤謙介監訳、ビイング・ネット・プレス、2007年

256.『動物と子どもの関係学』G. F. メルスン著、横山章光・加藤謙介監訳、ビイング・ネット・プレス、2007年

副題は「発達心理学からみた動物の意味」。人間の発達に介在する動物の意味を考える。ここで出てくる動物はおもにペットや家畜であり、野生動物や植物はあまり研究されていないようである。

虐待されて心を病んだ子どもが、馬や犬を育て、交流することで心を開いていく。こうした個別の事例はよくありそうだが、経験則ではない研究はなかなか進んでいないのが現状で、確かにこうした本は少ない。256『「人と動物の関係」の学び方』と事例が重複することもあった。

動物を対象とした虐待は、びっくりするほどむごい例もあったが、子どもの頃のイタズラは、持続したり、エスカレートしたり、対象を人間にしたりといったヤバイことはまず起きないとみてよい。

狩猟(動物)と子どもの関係についてはほとんど言及がない。狩猟民の子どもは豊かに育っている(たとえば、59『森の小さな「ハンター」たち』123『ピダハン』参照)。ペットだけではなく野生動物との関係も教育に応用してほしい。そのほうが「自然」。