伊藤英人の狩猟本の世界

262.『これからの日本のジビエ』押田敏雄編、緑書房、2021年

262.『これからの日本のジビエ』押田敏雄編、緑書房、2021年

日本のジビエを将来的に発展させていこうという、さまざまな試みを紹介。エゾシカ協会の先進的な認証制度も取り上げられている。

冒頭で、ジビエの定義を「とりあえず、シカとイノシシを対象」としている(本書内での一貫性はない)が、「野生動物の肉」としたほうが自然な気がした。本当は「狩猟肉」としたいが、そうすると、流通し利活用していきたい有害捕獲個体の肉がジビエと呼べない可能性が出る。一方で、ジビエとは本来、「ストーリーを含めて味わう野趣あふれる資源」であるとしている。これは納得できる。獣と正々堂々と勝負し、苦労して獲得したという思いは、狩猟者だけのもので、非狩猟者との共有はだいたいうまくいかないものである。肉をもらう人は誇張された武勇伝を義務的に聞かされ、うんざりする。ストーリーの共有がうまくいって、プラスに働けばいいのだが。

ジビエの流通の難しさが書かれていたが、逆に日本の家畜家禽の衛生管理・流通・消費の完璧さがかえって際立っている。品種改良された家畜家禽が、手作業を随所に挟みながらも徹底的に管理され、スーパーやコンビニにスライス肉や唐揚げが並び、格安で簡単に口の中に入れることができる。そして、おいしい。これをまるごと野生動物肉で再現するのは不可能だし、本来の野趣の志向にそぐわない。それでも、販売する以上、最低限の衛生基準をクリアし、収益を上げなければならない。牛・豚・鶏と背景があまりに違うので、いっそのこと、野趣やストーリーに重きを置いたほうがいいのではないかと思った。感染症も詳しく載っていたが、食肉を紹介するならそれは注釈か、「なかの人」がやることである。牛・豚・鶏との味の違いや、稀少性、SDGs(?)などを売り込んだほうがいいように思う。

やはり、自分で狩猟をして獲った鳥獣を食べることをふつうとしたい。歴史が始まる前からやってきたし、狩猟技術の飛躍的な進歩で、捕獲しやすくなっている。