次世代型エゾシカ捕獲システム調査の概要(平成12年度実施)
1 調査の目的
本道に生息するエゾシカについて、道では、エゾシカの絶滅を回避しながら、将来にわたって安定的な生息水準が確保されるよう、保護管理の取組みを進めている。
現在、「エゾシカ保護管理計画」に基づき、道東地域においては個体数の大幅削減を行う緊急減少措置に取り組んでいるところであるが、近い将来には、目標水準を保つための新たな段階を迎えることになり、生息数に応じた捕獲数の厳密な調整など、効率的な個体数管理の方策を確立する必要がある。
このため、エゾシカの狩猟について、今後、各地域の生息密度に応じた捕獲調整を行う管理型狩猟のシステムを検討するため、シカ類の捕獲方法として欧州で広く採用されている「ハイタワー」方式の効果等について、実証調査を行うこととした。
【ハイタワー方式とは?】
欧州でシカ類の捕獲に用いられている猟法で、猟場にやぐら状の構造物(ハイタワー)を設置し、塩、餌などで誘引したシカ類をやぐらの上から射撃して捕獲する方法。(写真:白糠町に設置したハイタワー)
2 調査の実施
ハイタワー方式については、欧州ではシカ類の狩猟に用いられているが、国内で事例がなく、エゾシカが給餌場へ集結する状況や射撃後に再集結するか不明のため、現地にハイタワーを設置して、エゾシカの反応、実施上の問題点を調査することとした。
なお、調査は、エゾシカ猟に関する知見を有する(社)エゾシカ協会に委託して行った。
3 調査結果
(1) 調査地域の概況
調査地域は、土地所有者、関係団体等と調整のうえ、次のとおり道内に3箇所を設定した。
(2) 調査の方法及び結果
調査地域における給餌、捕獲等の結果は次のとおりである。
区分 | 調査期間 | 給餌資材 | 捕獲個体 |
音別町 | H12.10.20-H13.2.28 | 鉱塩・岩塩、圧片トウモロコシ、ビートパルプ、配合飼料 | なし |
白糠町 | H12.11.20-H13.2.28 | 鉱塩、圧片トウモロコシ、牧草ロール、ヘイキューブ(乾草) | オス1(1.23)、メス2(2.15,2.19) |
西興部村 | H12.11.17-H13.2.25 | 鉱塩、牧草ロール | メス1(2.25) |
(3) 調査のまとめ
◆主な結果と考察について
○塩、餌などによる誘引効果
鉱塩・岩塩等の塩類では顕著な誘引効果が認められず、牧草サイレージや圧片トウモロコシに対する嗜好性が強かった。なお、無雪期や周辺地域でシカ猟の行われている時期には、餌場の利用に至らない状況も認められた。
○発砲による捕獲状況
捕獲機会は、調査地域3箇所の中では白糠町で多く、7回の発砲で捕獲3頭、半矢2頭の結果になった。
○射撃後の再集結状況
白糠町における発砲後の再集結の状況は、捕獲の有無に関わらず、数時間から2日間の間で餌場への出没が確認された。
このため、利用者を限定できる状況では、同一場所での連続利用が可能であることが認められた。
○ハイタワーの使用感と安全性
ハイタワーによる捕獲を経験したハンターから、使用上の利点として示された主な事項は、次のとおりである。
- エゾシカの数、性別、齢段階などの把握が容易
- 捕獲対象個体の選択が容易で、貫通弾による他個体の損傷を防止
- 貫通弾の地面への着弾が確実で、矢先の安全性を確保できる
◆今後の課題について
- ハイタワー方式については、本道への導入は可能であることが確認されたが、実施上の課題として、次の事項が指摘された。
- 狩猟に用いるためには、不特定利用者によるかく乱を防止するため、利用者を管理できる猟区制度との併用を検討する必要がある。
- 無雪期の駆除に用いるためには、餌に対する誘引効果の低減を考慮して、場所、餌などについて十分検討する必要がある。