ワシ類の鉛中毒防止の観点から、エゾシカ猟における鉛含有ライフル弾の使用規制が検討されている。しかし、非鉛含有弾頭(一部分に鉛を使った弾頭もあるが、以下では銅弾と統一する)に関する情報は充分ではなく、ハンターの間にはこれらに対する不信感も強い。そこで1999年7月24日、浦臼射撃場にて「銅弾による射撃練習会(試射会)」を開催した。このイベントは、1)専門家(銃砲店)による銅弾関連の講習、2)会員ハンターによる実射、3)射撃結果にもとづく専門家からのアドバイス、の三本立てで進行した。また、射手や射撃指導員、銃砲店らにはアンケートのご協力をいただき、射撃結果として集計した。これらを通じ、銅弾に関する情報交換(使用やリローディング時の留意点)と命中精度の検証を行なうことが可能であった。
参加者、話題提供、ならびに射撃結果
参加者は、射手9名および指導・見学者等12名であった。この中には、銃砲店(4軒)、射撃指導員(4名)、道庁関係者(3名)、猟友会関係者(2名)も含まれていた。また、取材陣も訪れ北海道新聞には次頁の記事も紹介された。
講習や情報交換で焦点となったのは、「銃身内の銅付着」と「殺傷力」の問題であった。前者については、「メーカー(バーンズ社)が推奨するクリーニング方法」が紹介され、薬品や器材が日本でも購入可能なことが示された。また、銃が道具である以上、「ハンターが自己責任としてクリーニングすることは当然」という指摘もあった。
殺傷力の問題は「半矢が多い」との指摘もあり、今後の課題として残された。しかし、銃刀法の規制から、一般ハンターが実験・検証することは不可能である。銅弾の殺傷力に言及した米国の文献もあるが、判断のベースとなる「狩猟形態」が日本とは異なる。したがって、「早急に法的問題がクリアされ、独自の殺傷力試験を行なう必要あり」との見解が出された。その他、銅弾頭の一般特性や銃身との相性の問題についても話題にのぼった。
実射では全員で200発以上が発射されたが、これまで指摘されていた「銃身の変形」や「横転弾」は発生しなかった。命中精度については、「狩猟には充分である」というのが当日の結論であった。
銅弾の使用感に関するアンケート結果はこちら
総括今回の結果は、1)命中精度は鉛弾に比べ若干落ちる場合もあるが、実猟上問題ないとの判断が多かった 2)銅付着のメカニズムと銅弾特有のクリーニング方法が説明された 3)銅付着に関連し、銃身の膨らみや横転弾などの事故は一切発生せず、これらの事故は一般的とは言えないの3点に集約される。したがって、これまで銅弾につきまとっていた「命中精度」、「銅付着(銃身の変形や横転弾の問題もここに含まれる)」、「殺傷力」に関する不信のうち、前2者の問題がほぼクリアされたと考えられる。 また、銃砲店、射撃指導員、行政、猟友会関係者、マスコミなどの立ち会いのもとに行われたことから、充分な客観性を持つものと判断される。
エゾシカ協会「ニュースレター No.2 1999.8.10 」より