エゾシカはどこにすんでいますか?
現在エゾシカは渡島半島など日本海側の一部を除く北海道のほぼ全域に分布しています。特に、雪が少ない道東地域の太平洋側で高密度に生息しています。ただし、冬になると越冬地とよばれる少雪で針葉樹の多い限られた地域に季節移動することが知られています。歴史的にみると、明治以前おびただしい数のエゾシカがいましたが、乱獲と記録的な大雪で一時は絶滅寸前に追い込まれ、その分布は阿寒・大雪・日高地方に制限されました。しかし、その後の保護政策と暖冬が個体数増加と分布拡大をもたらし、現在のような生息状況になったと考えられています。地域によってはエゾシカによる農林業被害や交通事故などが社会問題となっています。
参考サイト/北海道自然環境課 エゾシカ分布域のデータなどが公開されています。
農業被害や交通事故対策の参考書「エゾシカの被害と対策」
エゾシカと奈良公園のシカの違いって?
エゾシカと奈良公園のシカは分類上ともにニホンジカという同じ「種」なのですが、「亜種」のレベルで異なります。国内のニホンジカは6亜種に分類され、北海道のエゾシカ、本州のホンシュウジカ、九州・四国のキュウシュウジカ、屋久島のヤクシカ、馬毛島のマゲシカ、慶良間諸島のケラマジカがいます。またニホンジカはユーラシア大陸にも分布しており、ロシア沿海州、中国東南部、台湾、ベトナムなどに8亜種が分布しているといわれています。
シカは鳴きますか?
シカは何種類かの鳴声を使って情報交換をしています。「フィーヨー」というラッティングコールは秋の繁殖期にオスジカが自分の存在をアピールするためのものです。これは秋の山野に切なく響きわたる、高くて長い声です。「ピャッ!」という警戒音は危険を知らせ合うためのものです。他に親仔が互いの存在を知らせ合う、「ミュー、ミュー」という声などがあります。
シカは何歳になったらおとなですか?
エゾシカのメスは満2歳から出産を開始し、毎年6・7月に1頭の仔を生むことができます。したがって、満1歳の秋の繁殖期には成熟しています。オスも同様に満1歳の秋から繁殖に参加しますが、若いオスは体の大きいオスとの闘いに勝てずに交尾できないことがあると考えられています。メスの場合は、栄養状態が良ければ1歳以上の個体は殆どが妊娠するといわれています。
北海道にエゾシカは何頭いますか?
北海道環境生活部によると、道東地域(釧路・十勝・網走・根室地方)のエゾシカは平成5年度の時点で16万~24万頭いたと推定されています。このときの個体数を指数100とすると、その後平成8年度には指数120前後にまで増加し、平成13年度には指数60~100まで減少したと考えられています。したがって、平成13年度時点での道東地域の推定個体数は9万6千~24万頭ということになります。北海道の関係機関はヘリコプターや自動車によるカウント、ハンターからの情報、農林業被害額などの複数のデータを総合して、個体群動態の把握に努め、エゾシカの保護管理を実行しています。個体数の推定というのは、野生動物の調査の中でも最も難しいものの1つです。特に道東地域という広大な面積のエゾシカの数の推定は困難なので、推定値に大きな幅が生じてしまうのです。
参考サイト/北海道自然環境課 エゾシカ捕獲数の経年推移のデータなどが公開されています。
回答者・伊吾田宏正さんの研究エッセイ「エゾシカの季節移動を追う」はこちら。