一般社団法人エゾシカ協会

籠田勝基さん「良い肉を得るために必要なこと FAO、WHOによる提案から」


 本年(2003年)2月、国連食糧農業機構(FAO)と世界保健機構(WHO)は、“食品の標準化に関する合同計画”において食肉および鶏肉に関する規定委員会の第3次提案として「食肉の衛生管理に関する規定」を発表して、食肉の衛生検査に関する国際的標準を示した。

 この提案の基本的な考え方は、危険の発生時には何時でも危機解析が可能な所謂HACCP(危害解析重要管理点方式)に立脚したものである。

 この提案の中から野生動物(wild game)に関する部分を抜粋要約して紹介する(下表)。

 この提案で、ハンターによる情報の重視と、捕獲後速やかな内臓摘出,放血が勧められていることは当然であるが、摘出した内臓の輸送と検査は日本の現状では現実的ではない。日本の現状では野生動物の衛生検査そのものが行なわれていない。

 本提案を参考としながら、日本の現状に合った何らかの検査システムを構築することが、エゾシカ有効利用にとって今後の重要な課題であろう。

1 ハンターによる情報を重視(狩猟地域の情報、捕獲時、内臓摘出時の異常の有無など)。
2 捕獲後の速やかな処理(内臓摘出と放血)および一定時間内の処理場への運搬。
3  内臓の中で肺,肝、心、腎は屠体に残すことも可能(内臓部分摘出)であり、摘出した内臓は屠体と共に処理場に輸送されて検査を受けた後に屠体の解体が行われる。
4  検査の実施判定は屠畜場における検査に準じて行うが、狩猟動物に特有の、瀕死期の徴候、捕獲後の保管場所の影響、銃弾の開裂状況、腐敗の有無に焦点を当てて検査する。
5  捕獲個体と枝肉屠体を同じ場所に保管しない。
6  検査結果はハンターおよび捕獲に関係した人に知らせて食肉衛生の知識の向上に努める。
FAO/WHO『食品の標準化に関する合同計画』(2003年)収録の「食肉の衛生管理に関する規定」から(翻訳・籠田)

エゾシカ協会ニューズレター14号(2003年11月10日発行)より