一般社団法人エゾシカ協会

アカシカ増えすぎ、もはや制御不能


【スコットランドの新聞『スコッツマン』Tue 23 Sep 2003の紙面から】

 野生ジカが制御不能なまでに増えてしまったため、スコットランド高地地方の環境が壊滅の危機にあることが、最近の研究で分かった。

 環境保全機関のRSPBとWWFによるこの報告は、スコットランドシカ協会の保護管理計画を根底から覆すもので、駆除論争の新しい火種になることをは必至だ。

 同報告書は、現在の野生ジカの個体数はアカシカだけで空前の40万頭を超え、地方の住民たちへの悪影響と交通事故がいっそう増えるだろうと警告する。

「シカは国民共有の財産であり、景観を構成する重要な要素だが、アカシカ、ニホンジカ、ノロジカの数は今や戦後最大に達し、さらに増え続けている」とRSPGスコットランド上級保全管理官のマシュー氏。「この鹿の増え過ぎは、田園地方の野生動物に関心ある全員の問題としてとらえる必要がある」

 44年前、増えすぎたシカに対処するためにアカシカ協会(現・スコットランドシカ協会)が設立された。だがその後、シカの数は3倍になっている。

 専門家によると、暖かな冬と早い春の訪れが死亡率を下げ、若い個体の丈夫な成長に寄与しているという。

 また、シカの天敵がいないことや、狩猟用荘園の出現などにともない、シカは森林の外に進出して、いまではヒツジの減った牧草地がシカたちに独占されてしまっている。

 林業・農業をはじめ田園地方の経済の被害が甚大だが、さらにほかの野生動物への影響も広がっている、と報告書はいう。

 より深刻なのは交通事故で、シカに衝突したり、シカを避けようとして起きた事故は、英連邦全体で毎年2万件から4万2000件。シカ個体数の多いスコットランドでは特に多く、最近5年間で9人が死亡、10人が重傷を負った。

 報告書は、個体数対策を改善するために協会に権限と予算を与え、猟期の改正、さまざまなシカ被害の計測などをおこない、目標をシカ個体数抑制に定めるべきだ、という。

 いっぽう協会事務局のライター氏は「スコットランド全域でシカがあふれ出しているわけではない。協会は被害や危険が生じている高密度地域のシカ管理に焦点をあててきたが、今後はお互いにより緊密に情報交換していきたい」と話す。「持続可能なシカ管理のために、地域での規制がある一方、持続的なシカ管理は、総合的な土地利用の一環として、長期で、地方の事情に即し、また共同責任をもたなければなりません。オオカミや禁猟措置についての対立は、障害にはなりませんよ」

 政府スポークスマンは「貴重な自然環境と交通安全のために、立法措置をふくめ、協会を支えていく方針だ」と語る。

 WWFスコットランド事務局のペッパー氏は、「政府がこの問題に責任を持ち、協会に従来より効果的な対応をとるよう指示したことは評価できる」と話している。

エゾシカ協会ニューズレター14号(2003年11月10日発行)より