主催/社団法人エゾシカ協会 後援/西興部村 協力/西興部村猟区管理協会
講師と演題
◆「米国 モンタナ州の狩猟管理システム」
伊吾田宏正氏 西興部村猟区管理協会 研究員
◆「オーストラリア タスマニアの野生動物管理システム」
宇野裕之氏 北海道環境科学研究センター道東地区野生生物室室長
◆「ニュージランドの養鹿事情」
五十嵐敏彦氏 (有)ジー・エイ・シー代表取締役
2004年度のエゾシカ協会総会に合わせ、3人の講師を迎えてのセミナーが5月8日、西興部村の「ホテル森夢」で開かれました。
「モンタナ州の狩猟管理」というタイトルで講演したのは、昨年末の視察旅行から帰国したばかりの伊吾田宏正さん。全人口の25%が狩猟者という同州にとって、ハンティングは文化そのものだといいます。モンタナでスポーツといえば狩猟か釣りを指すほどで、シーズン中なら、ホームセンターで道具とライセンスを買って、そのまま出猟することも可能だそう。もちろん州政府・魚類野生動物公園局による保護管理も随所に工夫が凝らされ、年間6074万ドルの予算(主な財源はハンターたちが納める狩猟税とライセンス料)と約500人のスタッフたちが制度を支えているそうです。「モンタナではかつてシカが急減してマネジメントシステムが急進歩しました。シカの急増がきっかけになった北海道とは逆ですね」と伊吾田さんは話しました。
北海道環境科学研究センターの宇野裕之さんは「オーストラリア・タスマニア島の野生動物保護管理」と題して発表しました。北海道と赤道を挟んでよく似た緯度に位置する島で、気候も大きさも似ています。タスマニア州が取り組む保護管理の対象種は、たとえばポッサム(フクロギツネ)。林縁部を好む在来種ですが、農業のために森林が開墾されて生息適地が広がり、また近年は狩猟圧力が減ったため、2亜種のうちのブラッシュテイル・ポッサムが激増していて、抑制策がとられています。宇野さんは「個体数管理の裏付けは、1975年から全島百数十か所で続けられているライトセンサス。私たちがエゾシカ保護管理のためにモニタリングを始める時、お手本にしたのがこれでした」と説明しました。
北海道技術士センターの五十嵐敏彦さんは、発行したばかりの著書をテキスト代わりに、養鹿の将来性を語りました。成功例として紹介したのは、国内の計約4000農場でおよそ170万頭のシカが飼育されているというニュージーランド。同国ではシカは外来種ですが、1950年代に増えすぎたシカを駆除して肉をドイツなどに出荷し始めたところ、好評だったことから養鹿業が発達したといいます。現在の輸出額は150万~200万NZドルに達し、「牛を飼うより儲かっている」そうです。また道内の料理店や消費者に鹿肉について質問したアンケートの結果も紹介。五十嵐さんは「日本では狩猟や駆除の鹿肉は検査をクリアできていないのでスーパーで売れない。だからこそ養鹿に可能性があるんです」と力説しました。
(写真と文・平田剛士)
エゾシカ協会ニューズレター16号から転載