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「乱場」と「猟区」 北海道のハンターはだれでも(鳥獣保護法・銃刀法のルール遵守を前提に)禁猟区と私有地以外ならどこにでも自由に入っていって狩猟を楽しむことができる。この「乱場(らんば)」方式に対して、その区域で狩猟するハンターに対して、管理者が区域オリジナルのルールを設けることができるのが「猟区」だ。 〈「猟区」とは、放鳥獣等により積極的に狩猟鳥獣の保護繁殖を図る一方、特殊な狩猟規制を行うため、狩猟を行いうる場所の一部を区切って、その区域において排他的に入猟者数、入猟日、捕獲対象鳥獣の制限、捕獲数の制限等の管理を行う区域である〉(『新版鳥獣保護法の解説』1979年より) 今年から施行されている改正鳥獣保護法では、こんなふうに書かれている。 エゾシカ協会報告書は、〈保護管理体制を更に発展させるためには、「管理型狩猟システム」を導入していく必要がある。その手段が「猟区」の設定である〉と記した。 |
銃砲刀剣類所持等取締法
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地方自治体や猟友会などが運営 猟区には管理者が必要だ。都道府県知事の認可と、土地所有者の承諾を得れば、国・地方自治体・猟友会などが管理者になれる。 大日本猟友会によると2003年現在の猟区数は全国で35カ所(北海道内はゼロ)。シカ猟を中心にした猟区は岩手県三陸町と神奈川県津久井町の2カ所がある。 猟区の少なさは経営の難しさと直結しているが、当協会報告書は〈シカの生息数だけでなく、その生息環境を含めたマネージメント(保護管理)を実現させていこうと思えば、「猟区」は有効〉と判断している。 |
大日本猟友会 | |
ハンター教育・地域活性化・シカ保護管理 その根拠として、同報告書は3つの効用を上げている。 ひとつはハンター教育だ。〈猟区では、ベテラン・ハンターがガイドとして同行するために、初心者や土地感のない人にはうってつけである。ハンティングスクールを設置することも可能だろう。新しいハンターを呼び込むことができ、ハンターの高齢化が進むにつれて、猟区の重要性はますます高まるであろう〉(同報告書) ふたつ目は地域振興だ。〈猟区周辺のホテルや旅館、レストラン、ガソリンスタンド、雑貨店、狩猟具店等の施設がハンターに利用され、近隣地域が経済的に発展する〉〈服職業、剥製業、一部の食肉加工業などの商売はハンターからの利益だけでも経営が成り立つことがある〉〈猟区を設定することによって、農林業被害を及ぼす害獣としてのエゾシカを狩猟資源(商品)に転換し、農林業被害の予防に役立つ〉(同) そして最後はシカ個体群の適正管理である。〈「猟区」を設定していくことは、適切なエゾシカ管理、その管理の中での節度ある狩猟、合理的な許可捕獲(有害駆除)などによって、人とエゾシカの共存の実現につながる〉(同)。 こんな猟区制度についての西興部村での新しい実験に、今後も注目していきたい。 |
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エゾシカ協会ニューズレター第14号(2003年11月10日発行)から転載 現代デザイン研究所編『切り絵歳時記』(ダヴィッド社刊)の収録作品を利用しています。 |