回答者の宇野裕之さんは、北海道環境科学研究センター道東地区野生生物室（釧路市）の室長さんです。研究エッセイ「エゾシカを利用するヒグマ」はこちら。

シカの体重はどれぐらい？

　エゾシカの体重はオスとメスで大きく異なります。大人のオスの体重は最大で約140kg、横綱の朝青龍関と同じぐらいの重さです。メスの体重は60～80kgぐらい。同じニホンジカの亜種ヤクシカ（屋久島に生息）は体重が30～40kgぐらいしかありません。北と南のシカでは体の大きさが大きく違っています。

シカに前歯がないって本当？

　子牛に手をなめられたことはありますか？前歯がないことに気がつくと思います。シカはウシの仲間、反すうをします。下あごには前歯があるのですが、上あごの前歯はありません。上唇が硬くなっていて、この唇と下あごの前歯を使って草を刈り取って食べます。

シカの食べ物は何ですか？

　エゾシカは春から夏、山野に生える様々な草本を餌にしています。木の芽や若い葉も好物です。秋になるとドングリなどの堅果類、冬にはササや若い枝、樹皮を食べています。ササは餌が少なくなる冬期の大切な食物で、雪を必死に掘ってササを食べているシカの姿は印象的です。牧草や畑の作物も大好物なので困ってしまいます。

夏毛と冬毛の違いって？

　5～6月、冬毛から夏毛にかわります。夏毛は赤茶色で鮮やかな白い斑点があり、鹿の子模様と呼ばれます。子供も大人も鹿の子模様を持つのがニホンジカの特徴の一つです。9～10月、オスジカの角が袋角から枯角に変わる頃、毛皮は夏毛から冬毛にかわります。冬毛は斑点のない灰褐色をしています。オスは交尾期に泥あびをしたりするので全身黒々としています。

シカをどのように数えているのですか？

　秋、落葉の季節に、ゆっくり走る車から強力なライトを使ってエゾシカの頭数をカウントします。ライトセンサスと呼ばれる方法で、シカの目が光るので森の中でも見つけやすいのです。毎年同じ時期、同じ地域で調査を行い、数が増えているのか、減っているのか、ということを明らかにします。雪が積もっている時期に、ヘリコプターから森の中のエゾシカをカウントする調査も行われています。

参考サイト／北海道自然環境課　エゾシカに関する生態調査データなどが公開されています。