伊藤英人の狩猟本の世界

96.『事典 人と動物の考古学』西本豊弘・新美倫子編、吉川弘文館、2010年

96.『事典 人と動物の考古学』西本豊弘・新美倫子編、吉川弘文館、2010年

動物考古学の対象は、人と関係した動物に限っており、恐竜や自然死の野生動物は含まない。まさに人と野生動物の関係を探る学問である。二大狩猟獣のシカ・イノシシが主役だが、さまざまな野生動物・家畜・ペットが取り上げられる。江戸時代など、比較的近い時代も考察されており、考古学的手法の広がりを感じさせる。江戸時代人はイヌネコを食しつつ、一方で戒名をつけて墓を建てるといった、興味深い動物観をみせている。

縄文時代は、貴重な栄養源である骨髄をスープにして食べていた。現在でも骨髄は豚骨ラーメンに使用され、行列に並んででも食べたいというほどに日本人をひきつけている。味覚こそご先祖から受け継がれたものの、狩猟技術のほうはさっぱり忘れられてしまっているようである。