田村典子著、東京大学出版会、2011年

日本のリス研究の第一人者による総合的リス学。一人の学生が手作業で研究を始め、疑問を研究で解消していってリス学を確立していきながら、研究職に就き、子育てをするという、理想的だが今では夢のようなストーリーである。
音声解析、テレメトリ、遺伝子解析など手法が多岐にわたり、忍耐強く追究していく。着眼点や結果を出せる能力に感銘を受ける。リス学とともに研究者精神も学べる。私が学生のとき、国際哺乳類学会大会中に「国際リス会議」の会議室を覗き、おじさんおばさんばっかりで「リスいないじゃん」と思った程度のモチベーションであった。
生体捕獲など、大中型哺乳類に比べ研究しやすそうなのに盛んとはいえないリス学であるが、希少種保全や外来種クリハラリス(通称タイワンリス)分布拡大をはじめ課題は多い。ぜひ盛り上がってほしい。(2025年5月記)