ハクビシンの不思議

増田隆一著、東京大学出版会、2024年

一時は在来種説もあったハクビシンが、著者らによる遺伝子解析により台湾由来とされ、外来種となった。東北・関東のハクビシンは台湾西部、西のハクビシンは台湾東部、という2つの起源があった。

人為分布のルーツの探究は結局は「誰がどうやって」となり、人間社会の問題であって生態学的にはあまりおもしろくないが、そこからどう広がっていったかは興味深く、重要な研究である。著者は各都道府県の出現記録を丹念に調べている。今ではすっかり東京23区内にもお住まいである。

私のワナによくかかるが、あまりかわいくない。毛は色ツヤ良いが短く、北海道暮らしは無理だろうと思わせる。獣道の利用は、太い幹線道路を堂々と歩くのではなく、障害物の多い道を気にせず通る印象がある。

日本のほか、中国、台湾、ベトナムで食用とされているようである。味は、そもそも文章で表現するものではなく、AIに伺っても意味はない。(2025年5月記)