伊藤英人の狩猟本の世界

65.『図説 日本未確認生物事典』笹間良彦著、柏書房、1994年

妖怪は、人間がおそれている動物、さらには部位、行動、音などが、形や伝承として残っているところがおもしろい。動物との交渉を担う狩猟者のもつイメージも、おおいに反映されたことだろう。人間が恐怖を感じるのは、おおざっぱにみて「大きい」「突然出現」「不明瞭で謎」「黒い」「奇形またはキメラ」「牙、爪、角」などのようだ。まさに捕食者。彼らが現存する動物に似ているのは、人間の想像力や表現力の限界という理由ではなく、リアリティを追求した結果といえよう。現存する動物から離れすぎては、現実味が薄れてこわくなくなってしまう、という微妙な距離感が感じられる。

日本近海の人魚が全然美しくない。

65.『図説 日本未確認生物事典』笹間良彦著、柏書房、1994年