伊藤英人の狩猟本の世界
70.『料理物語』作者・版元不詳、1643年
(現代語訳および復刻版は平野雅章訳(教育社、1988年)ほか)
寛永20年(もう少し前か)の料理書。「獣の部」では、「鹿、狸、猪、菟、川うそ、熊、いぬ」の順に、どのような料理に用いるか書かれている。ウシ・ウマ・ブタはない。シカは「汁、貝焼き、煎り焼き、干してよし」、タヌキは「汁、田楽(山椒味噌)」。
「汁の部」の「鹿汁」は、薄味噌とだし、つまをいろいろ入れて仕立てる。吸い口(香味料)はにんにくと胡椒。
イヌ肉は現在あまり見ないが、考古学的には中世・近世の日本で食用にされたというのが通説になっている。カワウソ肉は「饗応次第」(1549年)によると毛利元就に供されている。
原書は素人には読みづらいし、読めたとしてもどういう料理かわからないので、解説の行き届いた教育社版がありがたい。訳者の平野雅章は北大路魯山人の弟子。
原文の解読にご協力いただいた、日本文学研究家の彦坂氏に感謝。