伊藤英人の狩猟本の世界
79.『山びとの動物誌』宇江敏勝著、福音館書店、1983年
炭焼き・林業を営んだ著者の、動物との交友録。子供向けということもあり、直接的な表現がされている。それだけに、猟師が埋めた内臓を掘り返して食べる話や、ハコデッポウと呼ばれる据銃による密猟、現代猟師の捕獲能力の低下などのエピソードにリアリティを感じる。この本で、タヌキが腹鼓を打つという言い伝えの謎が初めてわかった。著者の観察眼がきわめて鋭い。民俗学者の聞き書きのようなフィルターを通していない、「ふつうの人々」の生の声を聞ける、貴重なケース。改訂新版(新宿書房刊、1998年)もある。