伊藤英人の狩猟本の世界
91.『民族音楽紀行』小泉文夫著、学習研究社、2003年
青土社1978年刊の復刻。民族音楽学者のフィールドワークのこぼれ話。イヌイットなど狩猟民の歌と、著者との素朴なやりとりが少しとりあげられている。 インドで、生贄ヤギの屠殺の瞬間、著者は目を伏せたが、ご専門の鋭敏な耳が反応し、背筋の凍る音が全身に残った。視覚に偏重している現代生活者なら反射的に「目を覆う」だろうが、実際には音、におい、さらには手応えがあるのです。著者は20年後の追記に、こうした儀式への「慣れ」という興味深い感情を記録している。
最後はアイヌのトンコリの話。