伊藤英人の狩猟本の世界
149.『食料獲得の技術誌』W.H.オズワルト著、加藤晋平・禿仁志訳、法政大学出版局、1983年
先史時代の諸技術とその発展の解明が本書の目的で、現存する少数民族の道具・武器の構造と利用法を分析して比較している。取り上げられた武器もワナも自然物のみを組み合わせた単純なものばかりで、最もシンプルな「石」や「棒」が重要な働きをしている。棒といってもさまざまな形状と使い方があり、シンプルながらも洗練された万能具といえるもので、複雑さと完成度が比例せず、ただ単に進化の程度が低いと断定できないところが技術比較の難しさである。一方で、複数のくくり輪をもつ手の込んだ鳥用エサくくりワナもまたすばらしい。
めずらしい狩猟法のうち気になったのは、アイマラ族の音楽を伴う追い込み猟と、カリブーエスキモーおよびイグルリク族の「血のついたナイフ」によるオオカミ猟(なめると舌が切れて失血死)であるが、本書では深入りしておらず情報不足。