伊藤英人の狩猟本の世界
199.『泳ぐイノシシの時代』高橋春成著、サンライズ出版、2017年
泳ぐイノシシの本。山のイノシシが増え、海岸部、ひいては島嶼部にも進出するようになった。そんな「泳ぐイノシシの時代」に突入している、という。
イノシシの泳力について考察している。2キロくらいは軽く泳ぐ。猟犬や山火事に追われて海に出るような場合以外にも、新天地を求めて積極的に泳ぎ出すこともあるようだ。ニホンジカも泳ぐ。イノシシ科にはカワイノシシがいるし、シカ科には水鹿(サンバー)がいて、水に入ることに不思議はない。防除の際は海からの上陸も想定するようにと著者は警鐘を鳴らす。水際対策をしなければ!
水上での捕獲については書かれていなかったが、狩猟者にとって水上戦は有利である。犬を使ってダム湖などに追い落としてから仕留める猟法もある。銃を使わなければ狩猟者登録も報告も必要なく、水上の県境も気にしなくてよい。無防備な状態をしばしば目撃されるほど、イノシシが増えている、ともいえる。