シカ捕獲認証(DCC)とは
地域主体の野生動物管理
効果的なシカ管理のためには、シカの生息状況、社会的制約、地理的状況等を考慮し、新たな担い手を中心とした地域主体の野生動物管理体制を構築する必要があります。そこで、先進地である英国の制度をモデルとして、主にエゾシカをベースとしたシカ捕獲者の教育と認証を行なうシカ捕獲認証制度(Deer Culling Certificate、略称DCC)を創設しました。
さらにDCC取得者の間で情報交換できるネットワークを構築することで、シカ管理の現場にいるDCC取得者のスキルアップにつながり、各地で活躍することによって、地域主体管理が実現すると期待されます。
※Cullingとは英語で捕獲や間引きを指し、ここでは一般狩猟や有害駆除とは異なる「管理された捕獲」という意味で用いています。
教育理念
この制度では、以下の3つの理念について実践できる人材を認証します。
- 地域のシカ管理における効率的かつ安全で人道的な捕獲
- 優れた食材であるシカ肉の安全かつ持続的資源利用のための食肉衛生
- 地域主体管理を実現する体制づくりのための普及啓発
資格認証
認証はエゾシカ管理をモデルとした講習と試験で構成され、シカの個体数調整を効果的に行なうための捕獲に必要となる、専門知識や技術について幅広く学ぶ機会を提供します。その上で、認証を得るためには試験に合格する必要があります。認証には2つのレベルを設けており、レベル1(DCC1)では主に知識、レベル2(DCC2)では技術について認証します。
想定される受講者
鳥獣行政・林野行政職員、農業協同組合・森林組合職員、野生動物管理を学ぶ学生、シカ捕獲に携わる方、シカ肉処理に関わる方、野生動物管理に携わる方等。
英国シカ捕獲認証制度
英国ではシカ管理の4つの基本原則(合法性・安全性・人道性・食肉衛生)を備えた人材を認証するため、Deer Stalking Certificate※(DSC)という制度が1995年に創設されました。英国職業基準とリンクした23の官民学の関係機関からなるDeer Management Qualificationsが認証母体となり、9つの育成機関で講習と検定が行われています。DSC1では知識と射撃技術を、DSC2では実際に適切な捕獲ができるかを検定します。合格者は猟区への就職や食肉販売の際に優遇されます。
※英国ではシカ猟のことをdeer stalking、シカ捕獲者のことをdeer stalkerといいます。
2014年12月に英国狩猟協会でDSC1を取得した3名(左から東谷・伊吾田・松浦)
私たちはオホーツク山の幸活用推進協議会(下川町・西興部村・滝上町)の支援を受けて、2013〜2014年に渡英し、英国狩猟協会やイングランド国有林など現地の関係機関の視察、DSCの調査等を通して、日本のシカ捕獲認証の立ち上げに関するアドバイスを頂いてきました。英国には移入ニホンジカが生息していることもあり、今後もシカ管理における日英の連携を進めていきます。
2015年2月14日に札幌においてイングランド国有林野生動物統括野生動物管理官のノーマン=ヒーリー氏を招聘し、シカ管理と森林管理の連携とその人材育成について考えました。