エゾシカが成分表に
日本食品標準成分表2015年版(文科省)に「にほんじか(えぞしか)」が収載されました。日本人が日常摂取している食品のひとつとして認められたことになります。研究報告と比べると脂質の量や質、鉄の量などに違いがありましたが、天然ならではの個体差かもしれません。
高たんぱくで低脂質
食品成分の大まかな特徴を知りたいときは一般成分をみます。エゾシカ肉はとり肉に似ています(図1)。ただし、たんぱく質の質(アミノ酸)、脂質の質(脂肪酸)、灰分の質(鉄やカルシウムなど無機質)は別の話。詳しくはこちら(http://fooddb.mext.go.jp)。
肉なのに旬がある
夏から秋にかけ、ロース芯のたんぱく質と脂質が増加したという報告があります。猟期はちょうど旬に相当します。とはいえ、冬も春も滋味に溢れていて人気です。季節の移ろいを楽しめるジビエが通年流通しているとは、なんとぜいたくでしょうか。
エゾシカ肉は鉄のエース
鉄は酸素の運び屋。鉄が足りないと酸素が細胞に行き届かず、エネルギーを盛んに作る工場が失速して全身倦怠感が出てきます。エゾシカ肉は鉄のエース(図2)。鉄の摂取量が足りない方は、日ごろからエゾシカ肉を食べてみてください。
刺身はダメです
動物の肉と副生物(肝臓など臓器)を刺身や半生で食べるのは大変危険です。エゾシカにも、ウシやブタと同じく腸管出血性大腸菌やE型肝炎ウイルスを保有する個体がいます。病原体の有無と新鮮さには関係がありません。死滅させる手段は加熱のみ。O-157の死滅条件は中心温度75℃以上を1分以上保持です。
アツアツに限るワケ
エゾシカの融点(脂質が固体から液体に変わる温度)はウシやブタより高め。調理後は固まりやすいのでアツアツのうちにいただきます。
最近おいしくなった?
1994年までメスは禁猟でした。それまでは立派な角が目当てで肉は二の次だったといいます。ウシやブタはメスか去勢で、種オスではありません。
栄養士、イチ押し
北海道にはエゾシカ肉給食が日常的に提供されている施設がいくつもあります。メニューはミートソース、南蛮そば、肉みそうどん、カレー、そぼろ丼、カツ、竜田揚げ、青椒肉絲、酢豚ならぬ酢シカなどさまざま。油料理が多いにもかかわらずPFC比(1食におけるたんぱく質、脂質、炭水化物のバランス)は整っていて、喫食率も高いそうです。
解説 岡本匡代氏
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