伊藤英人の狩猟本の世界

88.『武道選書 槍術』初見良昭著、土屋書店、1994年

対人の槍術。槍は相手の間合いに入らずに攻撃ができるため、獣の牙と突進の猛攻を受けずに戦う際に欠かせない。
私が止めさしをするときは、まず頸の後ろを棒と手で抑え、喉を刺す。大型で近寄れない場合は、まず棒やワイヤーで抑え、槍で喉を刺す。非常に危険な作業である。ここでの棒と槍の使い方は「槍術」ともいえる。

対人槍術と対獣の違いは、防御の要素が前者で強いのと、後者では肉の利用を念頭に置いていることだろうか。前者では振り回すこともありうるが、後者では勢いをつけて刺すことはなく、正確に、慎重に、力強く刃を入れる。刃が骨に当たると欠けてしまうし、余計な傷をつけて肉のロスを出してもいけない。つまり、刺した後のほうが重要なのである。本書には数々の型が載っていて、そのうちの下段の構え、跳び退き、突き伏し、足の跳ね上げは使えるかもしれない。

著者の演舞では槍一本の装備だが、小刀を持っていないと、間合いをつめられた時に対処できない。古代ギリシャの槍兵士も腰に剣を差している。ワナ猟の止めさしでは相手の行動範囲が限られているので跳び退けばよい。

88.『武道選書 槍術』初見良昭著、土屋書店、1994年