伊藤英人の狩猟本の世界

89.『野生動物管理のための狩猟学』梶光一・伊吾田宏正・鈴木正嗣編、近藤誠司ほか著、朝倉書店、2013年

編集担当(というかワナ猟者)のひとこと/伊藤英人

89.『野生動物管理のための狩猟学』梶光一・伊吾田宏正・鈴木正嗣編、近藤誠司ほか著、朝倉書店、2013年

猟友会に属さずに単独猟をしている私は、狩猟現場の状況の悪化を身をもって感じています。日本の野生動物管理や後継者のことは、特に大きな懸念材料でした。本書は、この難題を改善すべく、最先端でご活躍されている方々に直接ご執筆を依頼し、成書化した、またとない企画です。日本の狩猟界がまもなく直面するであろう、劇的な改革を予感させる、エキサイティングな内容盛りだくさんです。私のような単独猟ではどうしても情報が偏りがちでしたが、本書は個人的にたいへん勉強になりました。腐敗ともいえる現状にあきらめかけていた私は、狩猟の将来は捨てたものではない、と思えました。これからも勉強しつつ狩猟の腕を磨き、「専門的捕獲技術者」に近づく、という新しい目標ができました。

編集作業の過程でお話いただいた、鳥獣保護法、ワナ猟、狩り部の活躍は、とても興味深いものでした。仕事中にかかわらず、熱が入り、興奮しては編集担当の域を超え、鳥獣保護法の苦情をぶつけたり、校正依頼の際に僭越な書き込みをしたりと、不快な思いをさせてすみませんでした。

梶先生は、序文に私宛の謝辞を入れてくださいました。「自らが罠猟師である朝倉書店伊藤英人氏は、細部にわたって詳細に校正を行ってくださった」と本に載る予定でしたが、会社の方針でカットになりました。残念ですが、お気持ちはしっかりいただいております。また、著者から私がエゾシカ協会で連載している記事の感想をいただき、私のタヌキ猟の結果を気にしていただいてうれしかったです。ありがとうございました。


装丁担当のひとこと/伊藤英人

89.『野生動物管理のための狩猟学』梶光一・伊吾田宏正・鈴木正嗣編、近藤誠司ほか著、朝倉書店、2013年

本書の装丁は、社内コンペを勝ち抜いた伊藤が担当いたしました。装丁は本職ではありませんが、このデザインはかなり気に入っていて、同窓会でうっかり「デザイナーやっています」と豪語してしまいました(少しモテた気がします)。本編から外れますが、ここではこだわりの数々をご紹介します。

【朝倉クラシック調】

学問としての重みを表現するため、朝倉書店農学系の歴史あるデザイン(『造園学』など)を参考に、タイトルに明朝体の平体を用いました。社内でも愛社精神のアピールとなり、評判が上々です。背景色を黒にする案も出ましたが、流通や書店では「キズが目立つ」と敬遠されるのでこの色になりました。英語タイトルの書体はウエスタン風のstencilです。

【洋書風の裏表紙と英語タイトル】

非日本語圏の外国人著者に配慮し、特に裏表紙のデザインを洋書風としました。英語タイトルは、英語論文で引用していただく際にも便利です。

【裏表紙にエゾシカの写真】

梶先生ご提供の写真を用いました。候補はいろいろあり、複数枚載せることも考えましたが、エゾシカ一枚で勝負しました。エゾシカは日本の野生動物管理において象徴的な存在です。私も学生の頃に彼らとよくつるんでいて、計測や採血をさせてもらったり、いっしょにヒグマから逃げたりした仲なので、愛着があります(このときにシカワナの練習もしておけばよかった)。

【章の見出しは「照準」】

照準(target)をイメージしつつ、目立ちすぎないようアレンジしました。銃の照準だけでなく、教科書としての学習目標の意味もあり、節の見出しにも使用しました。コラムの見出しは弾道をイメージしました。


『野生動物管理のための狩猟学』のちらし(pdf、532KB)

朝倉書店