伊藤英人の狩猟本の世界
100.『狩猟伝承研究』千葉徳爾著、風間書房、1969年
狩猟の民俗学的研究を網羅した金字塔。膨大なフィールドワークに裏打ちされた大著で、これを引用しない狩猟民俗研究はほとんどない。読むのがたいへんで、200ページくらい読んで一息つく頃に「本論」が出現する。800ページでも収まりきらず、『続編』、『後編』、『総括編』、『補遺編』、『再考編』と別冊5冊がつづく。幸運なことに出版社にこれらの在庫がまだあるらしい。セットで定価81900円。調査と記録のコストを考えるとかなり安い。本というものはありがたい存在としみじみ思う。
あまりの大きさに「読み切れない」という読者の声に応えて書かれたという『狩猟伝承』(法政大学出版局、1975年)がお手頃。これだけでも十分に狩猟民俗のおもしろさを体感できる良書である。しかしこの本、最近はオンデマンド方式で増刷しているため、新品より古本のほうが写真の解像度がよい場合があるので注意。