伊藤英人の狩猟本の世界
101.『武井壮の目指せ! 百獣の王』武井壮著、マガジンハウス、2013年
動物と武器なしで戦う方法。たぐいまれなる身体能力をもつ著者が、相手の弱点を突く戦法を伝授。
著者が「百獣の王」を目指すきっかけは大シカとの鉢合わせで、直感的に死を意識し、シカが去った後に「たまたま生き残った」と感じたそうである。ときに被食者となりうる人間の本能がそうさせたのであろう。
ちなみにこうした戦闘は、狩猟法に則っておらず、戦闘後の利用を考えていないので狩猟ではない。狩猟には、肉や毛皮を傷めない配慮がある。著者の示す戦法は、はっきり言って役に立たないが、勝てそうにないものも含まれている点や、クマ相手に8週間かけるあたりに、相手の冷静な分析、相手への敬意、自己の弱さの認識と向上心が表れているように感じた。