伊藤英人の狩猟本の世界

113.『動物による農作物被害の総合対策』江口祐輔監修、誠文堂新光社、2013年

113.『動物による農作物被害の総合対策』江口祐輔監修、誠文堂新光社、2013年

動物行動学に基づいた獣害対策論。現在の被害対策の問題点・改善点を、動物種別に具体的に示している。対策は行政もさることながら、当事者の役割がかなり大きい。捕獲技術者(狩猟者)も、ただ「○頭とった」ではなく、効果的な捕獲、さらにはその指導をするという意識をもたなければならない。

狩猟者について厳しい指摘がある。「一流のアマチュアでも三流のプロに劣るという言葉があるが、まさに肉の解体者にも当てはまることが多い。解体の上手な猟師でも、プロの技を見て腰を抜かすことはよくある」。捌く数が圧倒的に違うので、狩猟者は職人さんにかなわない。

野生動物の狩猟慣れ(釣りでいうスレた状態)は予想を超えていた。慣れたクマは、すぐに逃がされることを知りつつ、エサを食べるためにイノシシ用箱ワナにわざと入る。鳥獣がワナや銃から逃れる方法を「学習させない狩猟」は、被害対策でない狩猟にも必要な技術である。狩猟慣れした個体をつくらないヒントが学べる(すでに取り入れている方法もあると思いますが)。狩猟免許更新などの講習会は、ベテランの自慢話披露ではなく、こういった技術を共有する場にするべきである。