伊藤英人の狩猟本の世界
144.『日本の動物政策』打越綾子著、ナカニシヤ出版、2016年
タイトルからは動物関連法の歴史のようなものを想像してしまうが、本書は「さまざまな動物関連問題を政策学的にとらえる」ものである。愛玩動物、野生動物、動物園動物、実験動物、畜産動物について、現在の法とさまざまな立場を整理しつつ、人と動物の関係、というよりは動物にかかわる人と人の関係をよくしていくための指南書。300ページのハードカバーであるが、現場や当事者にこそ必要な知識である。
ひととおり目を通し現状を認識するだけでも、無用な争いのもととなっている誤解や先入観が解消され、より深い議論を展開するベースとなる。
守備範囲は狭いが動物全体について考えていきたいと思っている理系の動物学者にとっては、非常にありがたい存在である。今後も文系の動物研究者のご活躍に期待したい。