伊藤英人の狩猟本の世界
164.『食肉の低温処理』加藤舜郎著、養賢堂、1968年
コールドチェーン、冷却・凍結装置など、食肉業者中心の本だが、「肉質に影響する屠殺前の取り扱いと屠殺方法」「血行停止後の変化」「熟成」の各章や、肉の傷み・酸化を防ぐ冷凍冷蔵技術など、狩猟に関係する項目が多く、科学的根拠をもって学べる。「牛肉1000kgを35度から5度まで冷却するには…」と、肉を例に熱学の基礎を説明している希有な本である。全体的には生化学的性質の解説である。
ちゃんと読めば死後硬直と解硬を理解できる。血行停止から2時間後に体温が上がり、そこから下がる。「死んだらどうなるか」は、霊的な答えはいくらでもあるが、現実的にはこのとおりである。これで少しは安心して死ねる。
屠殺前には、絶食させ、水分を与えるといいそうである。