伊藤英人の狩猟本の世界

191.『ネコ——かわいい殺し屋』ピーター P. マラ・クリス サンテラ著、岡奈理子・山田文雄・塩野崎和美・石井信夫訳、築地書館、2019年


191.『ネコ——かわいい殺し屋』ピーター P. マラ・クリス サンテラ著、岡奈理子・山田文雄・塩野崎和美・石井信夫訳、築地書館、2019年

ノラニャンコたちを、多くの種の絶滅にかかわった驚異の侵略的外来種ととらえ、社会に認められつつあるTNR(捕獲・避妊手術・もといた場所に戻す)すら「遺棄だ」と批判する、勇気ある告発。ネコの狩猟能力は随一で、美しくもあり、敬意を抱かざるをえないが、人間が野放しにしたところに問題がある。アンチネコ派や鳥屋による感情的な攻撃では決してなく、生態学者による合理性ある提言のため(訳者も生態学者)、ネコ派は心して読み、現状を受け入れるしかないであろう。とにかく、飼うなら完全屋内でやってほしい。

捕食者を殺し屋と呼ぶのは私は好きではない。しかし、ネコが獲物を食用でないのに捕獲するのは、(トレーニングなどの意義があるのかもしれないが)殺し目的のイメージに合う。まさに、かわいい殺し屋(cuddy killer)である。

ネコは、狩猟との関係がおおいにある。アライグマ捕獲用のハコワナにけっこうかかるのである。林の奥まで進出し、ハコワナ内のえさを食べ、逃がされるのを待っていて、逃がすとまたえさを食べにくる。このネコが野鳥を食べまくっていたとは知らなかった。

鳥獣保護法では、山を拠点に生活する非飼いネコは可猟で、ノネコと呼ばれる。捕獲したノネコの処置は、自治体に相談しても狩猟者次第とのことなので、どうするか自分で判断しなければならない。

狩猟者は、人間の都合により外来種だの希少種だの駆除対象だのさまざまな立場に置かれている各種に対し、現場で直接に対応を迫られている。狩猟の後にどのような野となり山となるのか、生態系への影響を考慮したうえで行動するべきである。