伊藤英人の狩猟本の世界

192.『「自然」という幻想』エマ・マリス著、岸由二・小宮繁訳、草思社、2018年


192.『「自然」という幻想』エマ・マリス著、岸由二・小宮繁訳、草思社、2018年

「手つかずの自然」はもう存在せず、幻想にすぎない(いわれてみれば…)。外来種は絶対悪ではない(確かに…)。そして、「手つかずの自然」に戻すことなど不可能である(やっぱり…)。これらは、自然保護関係者には受け入れがたい事実である。では、これらを受け入れたうえで、われわれは何を目指すべきか?

自然保護や生態系管理思想の根本に迫る、斬新な啓蒙書。保全生態学や野生動物管理を学び始める人におすすめ。

あとがきにあるように、訳者は訳語にこだわっている。原題は“rambunctious garden”。河川がご専門の訳者はこれを「多自然ガーデン」とした。しかし、サブタイトルを「多自然ガーデニング」とすると「庭をどういじるか」という園芸本ととられかねないと感じた。「ごちゃまぜ生態系の科学」的な線でもよかったかもしれない。