伊藤英人の狩猟本の世界
202.『どんな肉でも旨くする』新保吉伸著、世界文化社、2019年
強烈なこだわりをもった肉卸職人の仕事論。NHKに出演した精肉のプロフェッショナルが語る。A3ランクや経産牛であっても、それぞれの特性をみて、「手当て」することで、取引先のシェフに合った肉に仕上げていく。肉の目利きと熟成、カットについて誇りをもっている。「早く、きれいに」の教えを忠実に守る。融点がどうこうと知ったかぶったり、「一頭買い」などの宣伝文句に踊らされがちな消費者にはうんざりしている。新保氏の信頼するシェフたちも同様に、肉に負けない仕事をして客に提供する。
プロのシェフが焼いた肉の写真はどれもおいしそう。しかし、1回の食事にワナ5基分、つまりイノシシ5頭分のお金がかかる。われわれハンターは、なんとかしてこの5頭をある程度うまく熟成し、堪能したい。捕獲後の肉の手当てにもっと気を配る必要があった。まずは切り方の工夫とドリップの除去か。
新保氏は熟成の確認に鼻を使っている。うちの冷蔵庫でも、熟成がイイ感じになってくると扉を開けたときに香ばしさを感じる。もっとよく嗅げば細かい違いがわかるかも。
狩猟は、仕事の種類が多く幅広い。そして、キリがないほど奥深い。「狩猟本の世界」も、然り。