伊藤英人の狩猟本の世界

203.『貝塚の獣骨の知識』金子浩昌著、東京美術、1984年

203.『貝塚の獣骨の知識』金子浩昌著、東京美術、1984年

化石で出土する獣骨の説明。初心者向けで、文がやさしくて図版が多く、ありがたい。シカはイノシシに次いで多く出るらしい。矢を射られたり、打撃を受けたりしている。こうした骨に残る痕跡から縄文人と動物とのつきあいを想像していく。

骨や鹿角は、良質の素材であり、部位ごとに適切に加工される。その加工技術もまたすごい。現在、獲物の有効利用がうたわれているが、鹿角アクセサリーなど使いみちのよくわからない製品を多く見かける。本書を参考に、先輩方に倣って、実用的な骨・角製品をつくったり、使ったりしたほうがいいと思う。

骨髄は貴重な栄養源であり、今の日本よりよく食べられていたようで、骨を割って食べた痕跡がよくみられる。トンコツスープなどの煮出しは盛んだが、煮出さずに食べる方法もいいかもしれない。また、硬い脳室もわざわざ割られており、脳髄が取り出されている。脳髄について、本書には食用としか書かれていないが、毛皮なめしの材料(脳漿なめし)としての利用もあったはずである。