伊藤英人の狩猟本の世界
204.『動物に「心」は必要か』渡辺茂著、東京大学出版会、2019年
痛烈な擬人主義批判。著者の意見がのびのびと語られており、すがすがしい。序盤は、哲学も関係する心理学史で、心の定義や認識を中心にみていく。そのなかで擬人主義がどう変遷してきたか、どのように(根深く)心理学に影響してきたかをみる。現在も擬人主義がはびこっており、実験動物を「この子」と呼ぶような惨状を嘆いている。
私も同感である。
止めさしなどで痛みを必要以上に避ける傾向に対し、私は違和感があった。これは、(人間と同様に)動物も死に際し痛みを感じるのは不幸であろう、(人間と同様に)安楽死を望んでいるであろうという擬人主義である。この考えをそっくりそのまま安易に輸入して適用するのはいかがなものか。