伊藤英人の狩猟本の世界
222.『狩猟』山と民俗の会編、エンタプライズ、1989年
在野の民俗学者の集まりが出した、狩猟民俗の文集。対象地域は日本各地にわたり、執筆者本人が狩猟をしていることもある。
伝承には地域性があり、差異も共通点もある。「狩猟者はネコを嫌う」「クマ毛皮にはノミがつかない」は共通しているが、巻き狩りでのクマの追い方などは地方独自のルールがみられる。
「日本古来の物語である狸や狐などの主人公は消え去り、SFや怪獣などがとって代っているのは非常に淋しいものである。そして、こうした伝説・民話の採集などが困難になりつつあることは、なお一層さびしいものである。」
昔と比べ、熊の胆や狩猟肉・毛皮の流通は衰退し、カモシカ猟等は規制された。狩猟のスタイルはすっかり変わったことだろう。
今では、こうした日本の狩猟伝承の本は新刊に期待ができない。