伊藤英人の狩猟本の世界
240.『膠を旅する』内田あぐり監修、国書刊行会、2021年
皮革製造の際の余りギレが膠製造にまわるため、皮革産業の盛んであった地域で膠がつくられていた。皮革産業とともに膠業が衰退し、製造職人が減るなか、膠を使う日本画家が将来を危惧し、膠産業を中心に北方民族(アイヌほか)、今に残る皮革産業などを調査研究した記録。まさに膠をめぐる旅。
日本画に使われる、岩絵具を定着させる糊が膠(にかわ)である。膠は古来より、動物の皮を煮詰めて抽出したコラーゲンからつくられる(語源は煮皮)。本書終盤にカラー写真で膠の製造工程が示される。なお、ここで使われている皮はエゾシカと赤毛和牛。鹿膠は画材屋でふつうに買えるし、使い方はYouTubeにある。膠の種類によって、発色や紙の収縮が微妙に異なる。膠を知ってこそ繊細な表現ができるらしい。写真は旭陽化学工業が復刻した三千本膠。