伊藤英人の狩猟本の世界
242.『最後の鷹匠』朝日新聞秋田支局編、無明舎出版、1987年
大正から昭和初期、東北に多くいた民間のタカ使いの回顧録。後継者不在、タカ供給不足、タカ保護などが原因で徐々に衰退し、「最後の鷹匠」武田宇吉郎氏が廃業宣言をするまでを記者が追う。当時深刻化していたタカ個体数減少をふまえた保護政策を朝日新聞は批判し、タカ文化の喪失を嘆くが、すでに獲物のウサギは冬季の貴重なタンパク源・収入源としてふさわしい存在となっていない。形式的に歴史の遺物として継承しても意味はなく、難しい問題である。それにしても、終盤にタカが入手できず、輸入したタカを訓練して使わざるをえない姿は痛ましい。
二度と手に入らないであろう貴重な記録を本に残すことには大きな意味がある。