伊藤英人の狩猟本の世界

243.『アウトドア刃物マニュアル』荒井裕介著、誠文堂新光社、2016年

243.『アウトドア刃物マニュアル』荒井裕介著、誠文堂新光社、2016年

刃物の使い方。ナイフカタログやその延長ではなく、ユーザー目線で、安全に配慮しながら取り扱い方を説いているのが素晴らしい。「実践編」では狩猟での皮剥ぎや精肉のシーンがあり、参考になる。わな猟者としては、穴掘り用としての「折りたたみノコギリ」の必要性を、声を大にして追加したい。

参考文献としている信太一高著『アウトドア・ナイフを使いこなす』と同じく、解体用に3インチセミスキナーをプッシュしてくる。私が思うに、3インチセミスキナーはアライグマ以下のサイズには非常にいいが、大型獣には小さくて時間がかかってしまうので、もう少し刃渡りがほしい。大型獣でも細かい部分には小型ナイフが有用だが、そうでない部分は、屠場でウシブタに使われる「皮剥ぎ」がいいと思う。包丁に近いので慣れやすく、研ぎやすくてよく切れるうえ、比較的安い(5000〜10000円)。初心者には、10万円の相田義人作スキナーよりは、くくりわなとナイフ数本をそろえた「狩猟セット」をまず買うべきだろう。

本書の特徴のひとつは、ナイフメーカーへの取材が深く、ナイフメイキングを始められるほどていねいに解説していることである。その部分だけパートカラーとなっており、ナイフ作りにかける著者の気合いが感じられる。今、私は、機械が使えて、金属のスペシャリストに教わりながらナイフがつくれる環境にある。師匠のように、作ったナイフを狩猟で使ってみたい。