伊藤英人の狩猟本の世界
244.『野生動物問題への挑戦』羽山伸一著、東京大学出版会、2019年
野生動物と人との軋轢について問題提起してきた著者の、半自伝的奮闘記と現在地。学生のころから、ひたすら地道に、地域住民や行政を巻き込みつつ、希少種、「害獣」、外来種と向き合ってきた。まさに社会の中にある野生動物問題において、原因や解決策を模索し実行しつづけるさまは、研究活動を通して社会を好ましい方向に変えていけるのではないかという期待を抱かせる。「挑戦」に値する、夢ややりがいがあるテーマである。
第2章「ワイルドライフマネジメント」で取り上げられている管理者不足の問題は、赤坂猛先生のエッセイをはじめ、エゾシカ協会がかねてより提言している重大な主張である。「マネジメントをする以上、マネージャーが必要なのは自明」。しかし、人材不足はいまだ解消されていない。
かつて神奈川県の丹沢でシカの違法くくりわな猟(針金を使った粗悪なもの)が流行したことがあり、その撤去活動が紹介されている。当時、合法的に有害捕獲を頼まれていた、とある狩猟者は、熱心な(過激派?)自然保護活動家にわなかけを妨害され、いまなお憤慨している。