伊藤英人の狩猟本の世界
247.『アイヌ人とその文化』R.ヒッチコック著、北構保男訳、六興出版、1985年
バチェラーの功績を補う、アイヌの考古学・民俗学。
アイヌは、北アメリカの灰色熊と同種の凶暴な野獣に対し、「性能の劣った武器で、恐れげもなく攻撃する」勇敢な民族とされる。狩猟具は「極めて粗末」と評価される。トリカブト毒でしとめるため、武器が強力である必要はない。当たれば、遠くても200m走れば倒れるそうである。宗教は「非常に原始的な自然崇拝」。
大型のシカやクマに挑む狩猟の記述は活き活きとしているが、漁撈については目も当てられない。漁撈は「ほとんど日本人の手中に握られている」。ニシンを中心とした沿岸漁業は、「アイノ人を雇用している日本人により支配」されており、「アイノ人の生業として、ほとんど関係がない状態にある」。