伊藤英人の狩猟本の世界
246.『下野猟師伝』丸山美和著、随想舎、2021年
栃木の高齢狩猟者たちの狩猟話。昭和初期以降の趣味狩猟、野生動物の増加、管理捕獲への移行などについて、現場目線で語られる。自分たちのしてきた巻き狩り、鳥猟、わな猟について、現実には違法かもしれないことも無礼講で正直に話しているため、現実味があっておもしろい。村田銃を担ぐ猟師の衣装なども、現代民族学的に価値があるとみられる。
現在の賞金稼ぎ的管理捕獲に物申している。ほかにも現場ならではの現代狩猟への批判があり、それぞれ注目度が高く、賛否がある貴重な問題提起と思われる。たとえば、狩猟グループの縄張り性の維持については、私は反対である。
くくりわなが「だまして捕るわな」と紹介されているが、そんなに悪い気持ちでしかけてはいない。獣に常に警戒されているなかで、正々堂々と勝負しているつもりである。